『抽象絵画』について
芸術論とひとりごと
先ず、デフォルメと抽象の違いから書いてみます。
デフォルメはモチーフを分解して再構築することで絵にしようとする
外科的な行為ですが、抽象はモチーフの構成要素をピンポイントで取り出して
それだけで絵にしようとする、いわば絵の遺伝子にアプローチする行為と言えます。
実際のモチーフを構成する要素はそれぞれ複雑に絡み合い影響しあっていますので
一要素を抽出してそれだけで絵にすることは厳密には不可能です。
そこで抽出した要素を最大限に延長し、その他要素を出来るだけ少ない分量
加えることで絵になる様試みます。
制作の中心はモチーフ(現実)から抽出した要素ですから
うまく行けば異様な生々しさのある絵が出来上がります。
成功例としてピカソのゲルニカを挙げてみました。
ゲルニカは「図」と言う要素を抽象(抽出)した作品です。
ゲルニカだけでなくピカソは生涯の制作を通して図の要素を抽象し
結果的に「絵は図である」と主張した画家と言えます。
コンセプトの話とも関係しますが、考え方が先にあってそこから制作が行われるのではなく、
生涯の制作を続ける中でそこに至ったと言うことが大切な点です。