『 弱→強 制作の鉄則 』
芸術論とひとりごと
絵画制作は、弱→強 へと描き進めるのが鉄則です。
この事の大切さを巨匠達はよく知っています。
下の写真はミケランジェロのデッサンです。
最初のアタリは淡く、その後のプロセスを追うごとに強い調子で決めの描写へと
向かっているのが読み取れます。
淡く描いておいてそれをより強い調子で修正して行く事は出来ますが
この逆をやろうと思っても不可能です。
絵画教室などで先生が生徒さんのデッサンに手を加えるシーンで
そのまま加筆するのではなく、一旦画面を消してから描き直す事があると思います。
これは意地悪で消すのではなくそのまま加筆するのが無理なバタバタ状態の画面を
秩序が作れる平らな状態に戻す為に行われるものです。
絵に対する理解が深い制作者ほど、絵描き始める前の何もない画面を大切にします。
決して迂闊な調子や無謀なトーンを付けたりはしません。
淡い、微妙な、弱い調子で色々な探りを入れて、形や陰影の様子なども
「よし、これで行ける!」と判断できるまで強い仕事は入れないものです。
傍から見ていると始めはちっとも進んで見えない制作が、
或る瞬間を境に急激に完成へ向かって行く様に見えるはずです。
今日書いた『弱→強 制作の鉄則』はデッサンだけでなく絵の具を使った制作、
その他あらゆる制作に共通するものです。