線と呼吸
芸術論とひとりごと
制作の中で使う線は様々です。
一本の線を引くときの筆圧、速度、そして呼吸は、
いま画面にどのような線が欲しいのかに応じてデリケートに関連付けられています。
息を止めてぢっと引く線や、普段の呼吸の10倍もゆっくりと息を吐きながら引く線など
呼吸法に応じて引かれる線は、それぞれ異なった表情を生みます。
普段から、引く線に応じた呼吸法は当たり前になっていて意識する事もありませんが
空気を吸い込みながら線を引くことは無い様です。
人間工学的な骨、筋肉の構造上狙った線を得るための精度が出ないのだと思います。
呼吸法と線の関係はチグハグな組み合わせをやってみれば直ぐにわかります。
100m全力で走った直後に、シーンと静まり返った長い線を引こうとしてみたらどうでしょう?
私が引く線の中で最も緊張を強いられるのは、ほぼ完成の場面で引く猫のヒゲの線です。
そこまで数十万数百万本引いた線のなかで最強の1本は
削り込む線の性質上一瞬で絵を壊しもし、また完成させる力を持った一本でもあります。