U先生との忘年会

言葉のスケッチ

U先生との忘年会

いつ頃からだったろうか、確か10年ほど前から

毎年1回は絵の具のU先生と一献傾ける様になった。

ちょくちょく連絡する訳でもないので例年久しぶりの電話は

何となく遠慮がちに始まり先生のご予定を伺って会う日を決めていた。

前回からは1年になる、そろそろ又、と思っていたところに先生から電話が掛かって来た。

いつもの居酒屋さんで絵の具や絵の事その他色々な事を話しながら

したたかに飲んで過ごす時間は私の勉強の場でありまた忘年会の様でもあった。

結果的にほとんど毎回先生にご馳走になってしまう私は

何となく電話するのに勇気が欲しい所に当たり前の年中行事を決める様に

電話してきてくださった事がうれしかった。

そう言えば5年前の震災のあと暫く経ってから

ひょっこり電話を掛けて来てくださったのもU先生だった。

「津波で流されてがっかりしているんじゃないかと思って」と電話の向こうの声には

シニカルな言葉とは裏腹に心配や心遣いが感じられたのを思い出す。

そうして昨夜、都内いつもの駅いつもの時間に待ち合わせて

始まった夕べは充実の時間となって暮れた。

先生は絵の具に関して世界一の理解の深さを持っておられる。

又、実際の油絵の具製造の現場ではこだわりと厳しさが同居した職人的な顔を覗かせる。

色々な話が詰まった充実の時間はあっと言う間に過ぎ去り

帰りのホームで電車を待つ私は、入って来ては出て行く反対ホームの電車を眺めながら

先生との出会いからこれまでの10年間を振り返り

またこれからの10年に思いを馳せてみた。

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