忘れ得ぬ一言

昨日は都内へ出かけ車窓から見えた景色に、

前回ここに来たのは雪の降った日だったことを思い出した。

そしてその時の映像は、「雪が降ると静かになりますね」と言った私に

並んで歩きながら「いい表現だねぇ」そう仰った作詞家S先生との出会いにまで繋がって行った。

数年前のアートフェアでのこと。

私のブースにやって来て「自分は絵の事はわからないけども好きで観に来ました」

そう仰る風格のある紳士がS先生でした。

質問されることに、絵が見える(伝わる)速度やその癒しの効果について

受け答えをしていると、S先生は絵を見つめながら

東日本大震災で被災された方々のその後の事を話し始められた。

「落ち着いて来た様に見えても、震災で一緒に暮らしていた

動物を失った人々の心は今も癒えていない。」

「音楽も美術もそんな人たちの心を癒せていないです。」

被災地に脚を運ばれたS先生の生の言葉だった。

そして私の方を向いて「同じ芸術家として悔しいと思わない?」と問われた。

その一言に涙が溢れた私は、今も時折そのシーンを思い出す。

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