巨匠との同居生活(神田古本街へ)

言葉のスケッチ

私が住んでいた池袋から神田の古本街までは地下鉄と徒歩で30分程で行けた。

事情を話して特別に仕送りしてもらったお金を手に画集を探す。

私が探すのは、素描の画集でミケランジェロのものだった。

出来るだけ印刷のクオリティーが高いもので無ければ

巨匠の制作の秘密を暴く事は出来ない。

図書室などで見て決めておいた画集はとても大きいいわゆる豪華本だった。

それは都内の大きな書店でも新刊で店舗に並ぶ種類のものではなく

限定出版されて多くは図書館、また個人の蔵書になって

あまり人目に触れることはない種類の本である。

狙うのは蔵書整理などでたまたま古本屋さんに並ぶそれである。

希少な本なので日本一の古本街であっても出会えるかどうか全ては運次第。

S美術学院は4時に終わっても秋の日はだんだん短い。

急いで駅へ向かう日々はそれから3週間続くことになる。

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