私の手のこと

私の手は小さくて大学生の頃、ピアノ科の娘さん達と
掌の大きさを比べっこしたら皆私よりも大きかった。

小さな私の手は大工仕事にも積極的で、
細からの大抵のリクエストには答えるし
宅内はその成果と痕跡に囲まれた生活環境になっている。

ご来訪のお客さん方のまなざしは素人仕事にも暖かく、「えっ、これ作ったんですか?」
とみなさんお上手に驚いて下さるから私の勘違いは一向に無くならない。

草むしりもするし包丁も握る、細の肩もみもするし猫の頭も撫でる。
いつも当たり前の様に動いてくれる手にはお世話になりっぱなしだ。

そんな働き者の私の手が一番輝くのは制作中
削る線の集まりの中に1mmほど隙間が広いところが出来る事がある。
視線で撫でて行くと滑らかな毛並みの一か所に引っ掛かりが出来た様で
ヴァルールを損なっている。

この場面で私の手は迷わず、その間にもう一本の線を引き入れる。

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