Section3-1『人体クロッキー』

絵画実践プログラム

金子豊文|絵画実践プログラム|人体クロッキー

はじめに

モチーフを短い時間で捉えるデッサンがクロッキーです。
人体クロッキーは最高の感覚訓練になりますので、何としてでも実践してください。
メリット最大の人体クロッキーですが、一つだけハードルがあります。
それはモデルの確保です。
必ずヌードで、1ポーズあたり20分間じっと動かずにいてくれる人を探してください。

家族、友人、恋人、誰でも構いません。

大切な時間をあなたの為に使ってくれるモデルさんの他に、
以下の画材を用意して確実な上達を目指してください。

画材から取り組み方の全てに至るまで上達の為の理由が
ありますので正確に用意して実践しましょう。

用意するもの

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室内用イーゼル、カルトン、クラフト紙(茶色)、コンテ(コンテ社 HB)、クラフト紙は60.5センチ× 45.5センチにカットします。このサイズは1枚もののクラフト紙を4分割した大きさです。ロールの場合には幅を生かして同じ大きさにカットしてください。

その日のポーズ数+5枚用意し、常にカルトンとの間に5枚を下敷きにします。

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コンテ(コンテ社 HB)は、対角線上の角に向けて削った後、写真の状態になるまで紙で慣らします。

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適切な環境

直射日光が画面に当たらない自然光空間。
もしくは昼光色蛍光灯の非常に明るい空間。
静かで集中できる環境で。

やってみましょう

次に、取り組み方について説明します

カルトン、イーゼルのセット

カルトンに下敷きをしたクラフト紙をクリップでとめます。

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そのカルトンをイーゼルに乗せて画面の中心が肩の高さになるように調整します。
視線を動かすだけで、モデルさんと画面を見ることが出来る位置にイーゼルをセットします。
(右利きの人はモデルさんが左、左利きの人は右に。
それぞれモデルさんを見る時と画面を見るときに腕越しにならない様に)

モデルポーズ

モデルさんのポーズは20分間そのポーズを保つのに無理のないものであればOKです。
立ち、座り、寝、どういったポーズでも構いませんが、
身体のどこかに捻りを入れたポーズの方が、
描き手の勉強のために親切なポーズといえるでしょう。

ライティング、モデルさんの位置

モデルさんに当たる光は直射日光は避けてください。
また、出来るだけモデルさんの後ろに雑多な物がない
(出来れば壁から少し離れた位置)ところを選びましょう。

全光から逆光まで身体の表面に出来る陰の様子は違いますので、
毎回意識的に自分が制作する位置を変えてみるのが良いでしょう。

時間配分

以下にモデルがポーズを始めてから20分間の使い方を説明します。
先ず、モデルの方を向いて目を閉じます。

→0.1秒だけ目を開いてすぐに閉じます(カメラのシャッターを切るイメージです)。
この時まぶたに残るポーズの残像でモデルがどういうポーズをしていたかを
出来るだけ詳細に思い出す様に努めます。

→わからなくなったらもう一度、これを1サイクル10秒ほどかけて5回位繰り返します。
(0.1秒の観察で見えてくるものに限界を感じたら)

次に目を開ける時間を0.5秒にして、先程と同じように頭の中の残像を観察します。
これを5回繰り返します。
(0.5秒の観察で見て取れる情報に限界を感じたら)

その次に目を開ける時間を1~2秒にして5回繰り返します。

最初は写真を写す様に観ましたが、モデルを見る時間を長くして行くにつれて、
細部の表情まで舐める様に(視線でモデルを撫でるニュアンスで)見ます。
そしてここから先は時間を気にせず、モデルを見たら(目は閉じずに)パッと画面を見ます。
画面の中にモデルの佇まいを見いだすように強くイメージします。
コンテを付けない様にして描く格好をシュミレーションして手を動かすのも良いでしょう。

以上の様にして、イメージの蓄積をしたらいよいよ描き始めます。
ここまで5,6分は掛かるはずですので、実際に描く時間は15分弱になります。

15分間で顔の表情まで描くのは困難ですからこだわらない事をお勧めします。
より大きな、モデルの佇まい全体が見えてくる様な画面を目指してください。
(わざわざヌードでポーズをとってもらっているのですから)。
例え途中までや、部分を描くところで終わってしまっても、モデルのポーズ全体が見えてくる
画面になることを目標としましょう。

線とトーン

準備したコンテを見てみてください。
このコンテの状態は線(表情のある)とトーンの両方を一本で描ける形状に研磨してあります。

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目の前に見ている様にモデルのどこにも輪郭線などありませんね。
あるのは「モデルの身体」と「その他のもの」です。
その変わり目の情報を線の表情に表すのです。
玉子のデッサンをした時に玉子の輪郭線は玉子なのか、床なのか背景なのか等、境目のどちらを描いたものなのかはっきりさせなければならなくなったのを思い出してください。
線を引く場合には、線のどちら側かを描いた(表した)線を引くのです。

具体的には写真の通りです。
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↑左のエッジを使った場合

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腕を縦や横や斜め等に大雑把に動かすトーンは絶対に付けてはなりません。
「陰の濃淡の様子を、可能な限り、見えている変化の通りに、抑揚をつけて、陰のかたちの通りに」
付けてください。寸法が歪んでしまっても構いません。

気持ちのこもった線、調子を付けることが肝要です。
歪んでしまった寸法は、より強いトーンでその上から修正して描き直します。
これを繰り返すうちに、細部を描きながら全体の様子を認識できる勘が養われていきます。

参考作品

サムネールクリックで拡大画像が見られます。作例のクロッキーは私が19歳の時に描いたものです。

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課題を終えて

いかがでしたか?
今回の人体クロッキーは難しくて当然です。
一枚あたりの制作時間も短い中で、
制作に必要な4人のあなた全員に必死になってもらうプログラムです。

継続して、出来るだけ頻繁に続けて行って下さい。

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